習近平政権によるメディア統制・弾圧は
現代版文化大革命の様相に。
美人妻・彭麗媛は江青化しているのか?
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
文化大革命の手法で大衆を動員・独裁を強化
新中国建国後、最大の政治的厄災は文化大革命だろう。一九六六年から一〇年にわたって全人民を巻き込んだ思想・政治闘争。一言で言えば、毛沢東の嫉妬と猜疑心から発した権力闘争だが、特徴としては思想闘争を建前にしており、また少年少女を中心に全人民を大衆運動に巻き込んだ。文革一〇年の間に、中国の良心と知識と伝統は破壊されつくされ、経済は停滞し、死者数は二〇〇〇万人以上に上った。とくに迫害の対象となった知識人たちにとっては思い出すことすら忌まわしい記憶である。
だが、じつは農村の素朴な人たちの間には、文革時代を懐かしく思う人たちもいる。貧富の差を見せつけられる現代よりも、都市の知識層も貧しく、農民と一緒に労働していた時代が良かったと振り返り、当時の革命歌やスローガンを聴くと、興奮がよみがえる人たちも、けっして少なくないのだ。
習近平は確信犯的に、文化大革命の手法で、大衆を動員して、自らの独裁を強化しようと考えた。その明確な方針が打ち出されたのは、二〇一四年一〇月に彭麗媛のアイデアで開催された文芸工作座談会[二〇一四年一〇月に著名な文学者や劇作家、音楽家、舞踏家、書家など七二人を集め開かれた会議]だろう。これを機に、習近平夫人の元軍属歌姫・彭麗媛が芸能界を牛耳るようになると、文化・芸能を通じた政治宣伝が活発化した。
とくに習近平の個人崇拝的なものが目立ちはじめ、たとえば二〇一六年の春節(旧正月)の大晦日に行われた中国版紅白歌合戦と称される「春節聯歓晩会」などは、もとは庶民の年末の娯楽番組にすぎなかったのに、あからさまな習近平礼賛番組になってしまった。